2011年8月15日月曜日

謎のスクール水着

私は中学2年から3年にかけて、美術部に所属していた。私以外の部員は、私と同学年のYと、私より1年下のSとHで、彼女たちはみな女性だった。
1984年7月のある日、中学2年生だった私は、中学校の保健室の入口近くの壁に、各学級の時間割表が貼られているのに気づいた。ワンピース水着 私はそれを見て、YとSとHとが属するクラスの体育の授業の時間割だけを暗記した。
それから数日後、1年女子のSの体育の授業、つまり水泳の授業が終わった直後の休み時間に、私は、Sのクラスの生徒が学校のプールから彼らの教室に戻るために通るであろう校舎の1階の廊下を目指して、その廊下につながる階段を全力で駆け降りた。1階に着いた私は急いで呼吸を整えて、Sがその廊下を通るのを待った。

コンクリート製のその廊下を、やがて中学1年生の男女生徒たちがにぎやかに話しながら、プールのある方から、私のいた所に向かって歩いてきた。その廊下は1日に何度もプールから濡れた体で歩いてくる生徒たちから滴り落ちた水のせいで、土色に表面が染まっていた。
私は彼らの中にいたSを見つけた。Sを含む1年の女子生徒がその時着ていたスクール水着は、前後の二枚の布を胴体の両側面で縫い合わせた、ごく普通かつ単純な構造のワンピースの水着で、ローレッグな形状だった。 3点セット水着 水着の生地は臙脂色、つまりワインレッドであった。当時の私から見ても、それは野暮ったく感じられるデザインの水着であった。
私は偶然を装って、澄ました表情でSに近づいた。Sは私に気づいて、話しかけてきた。
S「あれ? 伊集院先輩、何でこんなとこ居たはるんですか?」
私「何でって、別に…。休み時間やから外に遊びに出よう思てん。あかんか?」
S「いえ、そんな事無いですけど。…失礼します」
Sは私に軽く一礼をして、その場を去った。
ほんの一瞬の出来事だった。私はその時初めて、濡れた状態の1年生用のスクール水着を真近で見た。そしてすぐにある事に気づいて、密かに驚いていた。彼らの水着の、水に濡れて体と密着している箇所が、そうでない箇所よりも黒く見え、その濡れた布地を通して、それを着ている人物の素肌の様子がはっきりと、2、3メートル離れた場所にいた私にも見てとれたのである。つまり、彼らの濡れた水着が透け透けになっていたという事である。
私が見たSの体は華奢で、第2次性徴が始まったばかりのようであった。彼女の薄い胸板、目で確認できないほど小さな乳首、蚊に刺された後のように直径が小さくて色の薄い乳輪、皮膚の下のあばら骨の形状、水着2011臍の窪み、腰骨の最上部の前面の出っ張り、陰毛が全く生えていない平らな陰阜、そこに、正中線に沿って縦一直線にくっきりと刻まれた細い左右対称の形状の溝まで、私は自分の目で確認することができた。
Sの周りにいた彼女の同級生たちも同様であった。ブルマーのような形状をした男子用のスクール水着の、その臙脂色の生地が濡れて体に張り付いた事によって、水着の表面に、彼ら、1年の男子生徒の小さな陰茎や睾丸がくっきりと見てとれる状態になっていた。
私は驚いていた。当時の2年生のスクール水着の生地は黒味がかった緑色で、3年生のスクール水着の生地は黒味がかった青色だった。水着の形状は全学年とも共通であり、おそらく生地の素材も共通だったはずである。しかし、寒色、つまり青、緑、紫などに比べて、暖色、つまり赤、黄色、オレンジ色、ピンク色などの生地のほうが濡れた場合により透けやすいというのは、当時ですら少なくとも私には自明のことであった。
なぜ1年生たちは誰も、自分たちの着ている水着が透けているという事を口にしなかったのか?
それより、なぜ学校当局は、こんな水着を制服として採用したのか?
こんな水着を既製品として作っていたのは、何という会社なのか? その水着の生地の素材は? 商品名は? 商品番号は?
一番不思議だったのは、私の周囲にいた人間で、「ウチの学校の臙脂色の水着は透ける」という事を話題にした人間は、私がその中学校に在籍していた2年間にはひとりもいなかった、という事である。
歩いて遠ざかったSの姿が見えなくなってすぐに、私はすぐ近くの男子用トイレの個室に駆け込んだ。急いで全ての服を脱ぎ、それをドアの内側のフックにかけ、靴下と靴だけを履いた状態になった私は、勇ましく猛り、その先端が自分の顔のほうに向かって反り返った状態に、ついその前の数秒間に変形した自分の陰茎に優しく触れた。それの脈動が自分の右手の指に伝わった次の一刹那の後に、私の尿道から白濁した粘っこい液体が噴出し、見る見るうちに私の陰茎は萎れていった。
Sという自分の部活動の後輩で、自分の言う事を聞かない生意気な年下の女子の事を考えて、自分がこんなに興奮してしまったという事に、私はひどく後ろめたさを感じていた。
その次の部活動の時間に、私は同学年の部員のYと話をした。
Y「Sさんに聞いたけど、伊集院くんてこの前、水着姿のSさんに1階の廊下で会うたんやてなあ」
私「うん」
Y「どない思た? 嬉しかったやろ?」
私「何で?」
Y「Sさんの水着姿がかわいかったから」
私「何でえな、あんな子供の事。僕、Yさんの水着姿のほうがかわいいと思うで」
Y「いや、伊集院くんてやらしい。そんな事思てんねや」
私「そんな事ってどんな事? 別にやらしないやんか。Yさんはかわいいて、水着姿もかわいいんやろなあて思てるだけやん。じゃあYさんは美術の教科書に載ってる絵ぇって、みんなやらしいっていちいち思てんの?」
Y「そんな事無いわ。あれは…芸術やから」
私「そやろ?」
Y「…ふーん、そうなんや。伊集院くんて案外、しょうもない人間やねんな」
私「いや、そんな…そんな言い方ないやんか」
私はその時、こう思っていた。
「僕かて今、後ろめとうてSさんの顔まともに見られへんくらい、自分のした事気にしてんねんで。男かていろいろ悩んでるんや。お願いやから解ってな」
女の子同士ってええなあ…私は部活動でも居心地の悪さを感じて、ひとりでいじけていた。

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